情報管理・セキュリティ

小規模事業のバックアップ比較:クラウド保存から何を戻せるか

クラウド保存から仕事データを戻せるかを整理。同期・履歴・別コピー、GoogleとMicrosoftの復元条件、PC向けバックアップの選び方を紹介します。
この記事の内容
  1. 同期・履歴・別コピーは、役割が異なる
  2. GoogleとMicrosoftは「何を消したか」で復元条件が変わる
  3. PC向けバックアップで、クラウド上の全情報が保存されるとは限らない
  4. 戻したい時点と、再開まで待てる時間を決める
  5. 料金は保存容量以外の項目も入れて比べる
  6. 合成ファイル1つを戻してから運用を広げる
  7. 関連記事

仕事のファイルをクラウドへ保存していても、「必要な日の状態へ戻せるか」は別に確認が必要です。パソコンの故障、誤削除、ファイルの上書き、利用者アカウントの削除では、復元に使う機能と期限が異なります。

1〜5人の事業では、すべてに高価な仕組みを入れるより、止まると困るデータから復元方法を決める方が始めやすくなります。本記事ではGoogle Workspace、Microsoft 365、PC向けバックアップ、外付け媒体を、容量ではなく戻せる範囲で整理します。

同期・履歴・別コピーは、役割が異なる

同期は、複数の場所から同じデータを使いやすくする仕組みです。設定によっては、一方で削除した変更が他方にも反映されます。コピーが2か所に見えても、誤削除への備えが2つあるとは限りません。

履歴やごみ箱は、過去の状態へ戻すための機能です。ただし保持期間や対象データに条件があります。独立した別コピーは、元のアカウントや保存先で問題が起きた場合にも使えるか、という観点で用意します。

困りごとまず確認するもの別コピーを検討する理由
PCの故障クラウドに必要ファイルがあるか端末内だけのデータが残る
昨日の誤削除ごみ箱・管理者復元復元期限や権限に制限がある
先月の誤上書きバージョン履歴必要な版が保持されない場合がある
アカウントを削除した利用者復元・所有権移管ファイル単体の削除と条件が違う

IPAも小規模事業向けの対策資料を公開しています。製品名から入るより、自社のデータと運用を整理する資料として使えます。IPAの情報セキュリティ対策ガイドライン

GoogleとMicrosoftは「何を消したか」で復元条件が変わる

Google Workspaceの管理者によるDrive復元は、ユーザーがごみ箱を空にしてから25日以内という条件が示されています。削除されたユーザーの復元とは別の手続きで、無料の個人Googleアカウントに同じ管理機能があるという意味でもありません。GoogleのDrive復元条件

OneDriveのごみ箱は、個人アカウントでは原則30日、職場・学校アカウントでは管理者が変更していなければ93日という説明です。また、OneDrive全体を過去の状態へ戻す機能にも、契約と期間の条件があります。Microsoftのごみ箱説明、OneDrive全体の復元

この日数だけで製品の優劣は決められません。「ごみ箱へ入れた日」「ごみ箱を空にした日」「ユーザーを削除した日」では起点が異なるからです。自社のアカウント種別、保持設定、管理者の有無を確認してください。

PC向けバックアップで、クラウド上の全情報が保存されるとは限らない

PCのファイルを守る製品と、Google WorkspaceやMicrosoft 365のデータをサービスから直接取り出す製品は分けて考えます。クラウド上だけにあるファイル、メール、共有権限、コメントなどが、PC向けバックアップですべて保管されるとは限りません。

例えばBackblaze Computer BackupはPC向けのバックアップ製品です。料金が容量無制限と表示されていても、その表現だけで「仕事で使うクラウドの全データが対象」と判断しないでください。Backblaze Computer Backupの料金・対象案内

選定時には、次の3つを分けて一覧にします。第一にPCへ実体が保存されるファイル。第二にクラウド上だけにあるデータ。第三にファイルへ書き出しても失われ得る共有設定や履歴です。必要なものがどの方式で残るかを照合します。

外付けSSDへ保存する場合も同様です。納品PDFをコピーするだけなら単純ですが、メールやオンライン文書の編集履歴まで残したいなら、別の方法を検討します。

戻したい時点と、再開まで待てる時間を決める

バックアップの間隔は、失っても業務上取り戻せる範囲から考えます。毎日入力する受注表と、年に数回更新する会社案内では、必要な頻度が異なります。

架空の小規模制作会社残したいもの許容する戻り幅の例確認する復元条件
受注管理表当日の注文情報前営業日まで行単位の確認と再入力元
制作中データ編集前のファイル前日の作業分までアプリで正常に開くこと
納品済みデータ顧客へ渡した版納品時点を保持ファイル名と版の識別
契約・請求関連確定した書類確定版を保持保存要件とアクセス権

上の頻度は設計例であり、すべての事業に適した基準ではありません。顧客との契約や法令上の保存義務がある資料は、その条件も確認します。

復元速度も、サービスの宣伝値だけでは決まりません。データ量、回線、再ダウンロード、アプリの再設定を含め、仕事を再開するまでの流れを見ます。ファイルが戻っても、開くソフトや認証情報がなければ作業は再開できません。

料金は保存容量以外の項目も入れて比べる

クラウド型は契約期間、対象端末、保存容量、保持する世代、復元時の条件を確認します。外付け媒体なら機器代に加え、保管場所、持ち出し、定期コピーの担当を決める必要があります。

Backblazeの公開ページではPC向けPersonalとBusinessに年99米ドルの表示があります。日本円への換算、税、対象台数や契約条件は別に確認します。Google Workspaceなどの利用料を既に払っている場合、その費用に何を追加するかも分けて考えてください。Backblaze公式料金

架空の見積り例では、「外付け媒体の購入費」「別コピー用サービスの年額」「月1回の確認作業」を別行にします。安い方式でも誰も確認しないなら目的を満たしません。逆に、対象が納品済みPDFだけなら、大規模な仕組みを入れずに管理できる場合があります。

同じアカウントで全コピーを消せる構成になっていないか、暗号化した媒体の復旧情報をどこへ置くかも、価格と一緒に確認しましょう。

合成ファイル1つを戻してから運用を広げる

契約や設定の完了だけで、復元できることを確認したことにはなりません。実際の顧客データを消す必要はないので、「復元確認用」と分かるファイルを用意して試します。

まず文章や表を入れた合成ファイルを保存し、別コピーが作られた時刻を確認します。次にテスト用のコピーだけを変更・削除し、別のフォルダへ戻します。元の内容、ファイル数、開けることを確認し、日付と担当者を記録します。

大量のデータを一括で戻す機能は、他の利用者の変更にも影響し得ます。本番でいきなり使うのではなく、対象と影響を確認してから実施してください。

最初に選ぶべきなのは製品より、「明日なくなると困るデータ」3種類です。それぞれに保存先、戻したい日付、復元する人を割り当てると、標準機能で足りる範囲と、別コピーが必要な範囲が見えてきます。

退職者が所有するファイルの扱いは、退職時のアカウント整理で確認できます。

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